2021年3月18日

アメリカでの報道写真 Vol.2 Kansas City Star

今週末はウェディングフォトのブログを少しお休みして、

フォトグラファー Tsutomu がアメリカ時代に活躍?していた、報道カメラマンとしてのキャリアのご紹介をシリーズでお話しております。

第二弾はアメリカのど真ん中、ミズーリ州にある Kansas City Star という新聞社でインターンとして勤務していた時のエピソードから。

アメリカの新聞社では新人研修という物がありません。

4月に一括採用ではないので、入社式という物もないですし、

採用されたら部署とかスタッフを紹介されて、「じゃあ明日からよろしくね」そんな感じです。

どんな新聞社でも、会社でも、即戦力がある人しか雇われないアメリカ。

でも大学を卒業したてだと普通、経験が無いからから使い物にならないですよね。

じゃあどうするかって?

そのために、インターンシップという制度があるのです。

そして私の通っていた San Jose State University の場合、

少なくとも一度は8週間以上のインターンシップを行うということが、卒業するための単位としてありました。

しかもボランティア(無料)ではなく、給料が支払われるインターンシップを行う事、という条件までありました。

最近は日本でもインターンシップの制度が充実してきましたが、

一日だけだったり、一週間だけのような、なんちゃってな物も多いようです。

私の場合、なんと5回ほど学生時代にインターンシップを行いました。

3回は夏休みの間に、他の2回は学期中の掛け持ちで。

普通のアメリカ人もそんなにはインターンシップはやらないみたいですが、

英語力の乏しい日本人としては、そのくらい経験が無いとアメリカで就職出来ないと思い、回数を重ねていました。

学期中の二回は地元シリコンバレーの週刊誌でしたが、

その他は全米各地を回りました。

一度目はシアトルに北部にあるチューリップで有名な田舎町、Skagit Valley で、

二度目が今回ご紹介する、Kansas City という街にある新聞社です。

そもそも、Kansas City って聞いたことありますか?

ほとんどの日本人には馴染みの無い街だと思います。

いや、それなりに田舎で、ダウンタウンから車で40分くらい走ると、大量のこんな牛さん達と出会えますw

でも、それなりには実は都会。

ソフトバンクが買収した事で少しは名前を知られるようになった、Sprint という電話会社の本社があります。

他にも、ホールマークという、アメリカ再大手のグリーティングカード・メーカーの本社もこの街にあります。

アメリカで thanks カードやクリスマスカードを購入された経験がある方でしたら、

王冠のマークがついたカード、一度は見たことがあるかも。

昔はチャーリーパーカーを始めとする、ジャズがけっこう流行った地域でもあったんですけど、この街で活躍していた人達は皆さん70−80歳くらいで、音楽シーン的にはちょっと廃れ始めているみたい。

そんな街で3ヶ月間ほど過ごしてました。

アメリカのほぼど真ん中にある街だけあって、

Kansas City に来ると本当のアメリカを色々と垣間見る事が出来ます。

アメリカといえば、カリフォルニアやニューヨークのイメージが強いですが、

残りの9割はどーんと広々とした田舎町の集合体。

もちろん、愛国心たっぷりの人達が沢山いらっしゃいます。

インターンシップを行ったのは夏休みの6月から8月。

沢山のお祭りが行われる時期なのですが、

特に一番大きなイベントなのはアメリカの建国記念の日である 7月4日。

どこを見渡しても Red White and Blueがひろがっていました。

ここまでだと気持ちよいです♪

この日、街の各地では記念パレードが行われるのですが、

子供達に一番人気なのはやっぱりアメリカの国旗模様。

新聞社に勤める身としては、こういう子供達を見つけてひたすら写真を撮っていくのがこの日の仕事でした。

アメリカの田舎で人気なスポーツといえばロデオとアメフト、そしてプロレスくらいかなと思っていたり、もう一つ実はありました。

それがモータースポーツ。

一番有名なのは NASCAR というカーレース。

鈴鹿サーキットのような様々なカーブがある道路を走るのではなく、

ひたすら円形のサーキットをぐるぐる回るレース。

デイトナ500だと500マイル分、200周ずっとグルグル回っていますw

でも、田舎町に行くと、色々なマイナーなモータースポーツが展開されています。

一番衝撃だったのはこの、Demolition Derby ってやつ。

窓ガラスがいっさい付いていない、ボロボロの車が8台くらいスタジアムに入ってきて、

お互いの車をバックでぶつけ合って、最後まで走り続けた車が勝ちっていうゲーム。

この取材に行ったときは、最初の5分くらい、ひとりポカーン、って感じでした。

一番人気なのは、頑丈さで定評のある60年代から70年代に作られたアメ車。

カクカクしていて、マッスルカーと呼ばれる車達。

あまりに強いから、もっと最近作られた車を使っての軽量級とか、ワゴン車専用とか、階級別でのコンテストも行われているみたい。

どんな感じで戦っているか興味ありましたら、こちらの動画をチェックしてみてください。

モータースポーツといえば、こういうのもありました。

その名もMud Marathon (マッド・マラソン)

泥んこ・レースとでも訳せば良いでしょうか。
 

アメリカでは小児癌患者への寄付金を募る目的などで mud race という、泥んこの中を走るチャリティー・レースが全米各地で開催されているですけど、これはその車版みたいな感じ。

作られた沼地のコースに向かって巨大タイヤを取り付けたトラックやジープが突っ込んで行き、どこまで走り通せるかを競うレース。

もうね、望遠レンズを使って遠くから撮っていても、

泥がガンガン降ってきて、カメラの掃除が大変でしたよ。


 

借り物機材じゃなかったら絶対に引き受けないレベルw

お祭りと言えば、こういうのも撮影しました。

Kansas City で行われた、ゲイ・プライド・フェスティバル。

メインより舞台裏が好きな私。

ドラッグクイーン・ショーの裏側に入らせてもらい、一枚目の写真を撮ることが出来ました♪

うちの写真部長はこの一枚をとても気に入ってくれたのですが、

編集長の「ちょっと刺激的過ぎる」という一言で、紙面に使われたのは二枚目に。


 

プロレスの取材したらみんな上半身裸で戦っているのに、

ゲイだったらなんで裸の写真がダメなの? って食い下がったのですが、ダメでした。

うーん、やっぱり田舎の価値観は難しいですねw

意外に私が好きだったのが、feature art という写真を撮るお仕事。
 

それなりの都会だとしても、毎日交通事故や事件、スポーツイベントがある訳ではありません。

時には平和だからか、翌日の紙面に載せる写真が無いから、何か絵になる物を持ってきてという依頼がありました。

夏休み期間ですから、「今日で晴れの日が2週間続いていますね」とか

「ついに最高気温が38度を超えました」

的なニュースと一緒に使う写真が求められる事が多く、

おのずと水辺に行って楽しんでいる子供達を探し求めました。
 

新聞が使ってくれる面白い絵を撮る事自体はそれほど難しいことでは無いのですが、

大変なのは被写体の名前を貰う事でした。

アメリカの新聞社では、写真のキャプションに写っている人達の名前を記載する事がルールとなっていました。

被写体が名前を教えてくれる事が、新聞に写真を記載してもOKという暗黙の了解みたいになっていましたので。
 

この時の新聞社だと5人ルールというのがあって、写真にメインにはっきりと写っている人物が5人までの時は、その人達全員の名前を貰ってくる必要がありました。

なので最初のメリーゴーランドの場合は、子供達が降りてくるまで待って、親にも了解を得て全員の名前をゲット。

水辺の写真に至っては、私も水着で撮影していたので、

家族に岸辺まで上がって貰い、メモ帳を持ってきて名前ゲット。

撮るだけ撮ってバイバイの日本の新聞記者、羨ましく思いましたw


 


 

さてさて、本当は Kansas City で撮った写真、まだまだ沢山あるのですが、

長くなってきたので今日はこの辺で。


 

次回はこの翌年、アリゾナ州フェニックスという街でインターンシップをしたときの写真をご紹介させていただきます。


 

お楽しみに!